TVなどで相手を刺激しないために直接的な表現を避け、遠回しな言い方をするときによく使われている「オブラートに包んで」という言葉。
最近ではそちらでの露出が多くなっていますが、本来、オブラートとは飲みにくい薬を包んだり、ゼリーやグミなどに使われているでんぷんから作られた半透明の薄いシート(オブラート)、あるいは、キラキラとした白い粉状(粉末オブラート)のものです。
オブラートメーカーによって多少の違いはありますが、基本的に原料は馬鈴薯澱粉や甘藷澱粉といったいも類(地下茎)のでんぷんを使用して作られています。
いくつかあるでんぷんの中からどうしてこの2種類のでんぷんを使用しているかというと、
・特に製造過程において、強い粘りが必要なこと。
・出来る限り透明に近いオブラートが求められること。
・価格面、流通面から入手しやすいこと。 などの理由です。
オブラートは、馬鈴薯澱粉や甘藷澱粉に100℃程度のお湯を入れて攪拌して作った粘りの強いでん粉糊を厚さ0.03㎜ほどに調整したゲージの中に流し込み、表面温度100℃程度の回転式蒸気乾燥ドライヤーで乾燥させて出来上がります。
この0.03㎜程度の薄さを保つためには適度な水分を持った強い粘りのあるでんぷん糊が必要になります。
さて、いくつかの種類があるでんぷんの中で特に粘性が高いとされるいも類(地下茎)のでんぷん。
そのうち、オブラートの主原料となっている馬鈴薯澱粉と甘藷澱粉の特徴について紹介したいと思います。
まず、馬鈴薯澱粉ですが、皆さんには最も馴染みのあるでん粉ではないかと思います。ジャガイモから抽出されたでんぷんで、「片栗粉」は馬鈴薯澱粉です。
普段のお料理であんかけ料理のとろみ付けや唐揚げの衣付け、ハンバーグや餃子のタネなどのつなぎとして使うこともあるかと思います。
《馬鈴薯澱粉》
・粒径 2~80ミクロン 平均粒径 30~40ミクロン 市販でん粉の中では最大の粒径
・アミロース 20~25% アミロペクチン 78~80%
・糊化開始温度 60~63℃程度 最大糊化温度 66~71℃程度
・加熱した場合の糊化温度が他のでん粉と比べて低く、透明で粘性の高い糊液が得られる。
・加熱時間が長くなると、粘性が急低下し粘性の安定性が乏しい。
・高温、高湿の状態で長期保存する場合、他のでん粉と比較して粘度の低下傾向が大きい。
・代表的なものは、片栗粉。その他練り製品、タレやソース、打ち粉など、様々な調理食品、製菓材料として最も幅広く使われているでん粉。
《甘藷澱粉》
・粒径 2~35ミクロン 平均粒径 18~20ミクロン 形状 釣鐘形
・アミロース 17~19% アミロペクチン 72~75%
・糊化開始温度 65~73℃程度 最大糊化温度 80℃程度
・細胞内に多量の空気を含む。
・糊化温度は馬鈴薯澱粉に比べてやや高く、約80℃くらいで全ての粒が完全に糊化分散する。
・糖化原料として多く使用され、春雨や葛切り、わらび餅の原料としても使用されている。
このようなでん粉の特徴を利用して昔も今も同じ製法によってオブラートは作られています。
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