誤嚥を防ぐためには「とろみ」付けが重要です。しかし、食べ物や飲み物に「とろみ」を付けることの重要性があまり知られていないように思われます。
ここでは、そのことが書かれた新聞記事の紹介をしたいと思います。

誤嚥防止へ基礎知識確認を
簡単ではない「とろみ」付け
所要時間や温度 製品により違い
加齢とともに喉の力が弱ると、気管に誤って飲食物が入ってしまう誤嚥を起こしやすくなる。誤嚥対策の重要な手だてが、水分にとろみを付けることだが、その基本的な知識が意外に知られていない。とろみ付けの特性や誤嚥時の対処法を確認しておこう。
私たちの喉には、空気が通る気管と飲食物が入る食道がほぼ同じ高さでぶる下がっている。通常は気管が開いているが、物を飲み込む0.5~0.7秒間だけ閉じて食道に物を送り込むという、危ういタイミングで使い分けている。年を取って誤嚥が増えるのは、この気管を閉じる筋力や正確さが衰えるからだ。
特に誤嚥しやすいのが水分。「高齢者の方はよく『水もろくに飲み込めないなんて』と嘆くが、こぼしたらあっという間に広がる水を想像してほしい。あれと同じ現象が喉の中で起きるのです。人間が生きる上で欠かせない水分が最も誤嚥しやすいというのは悩ましいが」と、日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック(東京都小金井市)の菊谷武院長は語る。
そこで、喉を通る水分の速度を落として広がりにくくする工夫、とろみを付けることが重要になる。喉の力を回復させるのは難しいが、水分の方にとろみを付ければ、喉の機能は変わらなくても安全に物を飲み込めるようになるからだ。
だが、実はとろみを付けるのは簡単でない。同じとろみ剤でも、お茶と水、みそ汁、ジュース、牛乳では所要時間に大きな開きがある。温度による差も大きく、40度のお茶にとろみを付けるには2分もあれば十分だが、冷蔵庫から出した冷たいお茶は10分ほど待つ必要がある。「このことを知らずに、とろみが付く前に飲んで誤嚥してしまう事故が後を絶たない」と菊谷院長。
さらに悩ましいのが、製品によってもとろみの付き方がまちまちという点。「例えば、砂糖ならどのメーカーのものでも同じ量を入れれば同じ甘さだが、とろみ剤は同じ量でも、製品によって2~3倍もとろみの付き方に差があるので注意が必要」
また、誤嚥を起こしたら、周囲に遠慮などせずにしっかりむせ切って命を守ることが最優先だ。「自力で気管から出せないようなら、周囲の人が、異物が気管の奥に行かないように頭を低くさせたり、横に寝かせたりしてから背中をたたいてあげる。それでも難しければ、速やかに救急車を呼んでください」と、菊谷院長はアドバイスしている。 (「静岡新聞」夕刊より引用)
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