【誤嚥の起こるメカニズム】
誤嚥による肺炎が日本人の死因の第三位になって久しいですが、なぜ誤嚥は起こるのでしょうか。
人間の体は食べ物を口に入れた時から沢山のセンサーによって、食道へ運ばれます。
第一段階が咀嚼です。食べ物を噛んで潰す時に第一の消化酵素が口腔内から分泌され、消化が始まります。
それと同時に、食べ物を丸めて食塊(しょっかい)という塊にして「ごっくん」という嚥下反射が起こる前の準備にかかります。
そして、喉の奥にある「喉頭蓋(こうとうがい)」によって、鼻や口から入る空気と飲食物が気道と食道に分けられます。
喉頭蓋は先に触れた通り反射で動きますが、その反射が上手くいかないと食べ物が気道へ入り込んでしまいます。
様々な解剖の書籍では分かりやすく気道と食道はぽっかりと穴があいているように描写されており、
気道は軟骨によって支えられた管がしっかりと常に開いていますが、食道は風船のような仕組みで動いています。
つまり、食べ物が入るまで食道はぽっかりと開いているのではなく、内壁同士がくっついている状態にあります。
そこに食塊が送り込まれることで重力により、胃へと運び込まれるのです。
気道は普段から空気の通り道なので開いているのですが、鼻毛や絨毛、そして気管支の入り組んだ構造によって
クリーンで滅菌された状態である代わりに、胃酸のような強力な殺菌作用もありません。
うっかり入り込んだゴミなどは咳き込むことで外に放出する仕組みになっているのですが、喉頭蓋の働きが弱まると
食べ物が十分に咀嚼されることもないまま、開いている気道へ流れ込んでしまうのです。
高齢者や障害者は咳き込んで排出する力も弱いので、食べ物や食べ物とともに飲み込んだ細菌やウィルスによって肺炎を起こすということに
なるのです。
【飲食物にとろみを付けることは簡単で重要な誤嚥防止!】
飲食物にとろみを付けることによって、ごっくんと圧力をかけて食べ物を食道へ流す力が必要なくなります。また、とろみを付けることで
液体もスプーンですくって口にすることが出来るほか、重力で食道から胃へと食塊が運ばれることもスムーズになります。
現在は、経鼻経管栄養が発展しているので、誤嚥が続くと経鼻経管栄養で栄養を摂取することは可能ですが、口から物を食べられるということは
とても幸せなことです。食べる楽しみは舌だけではなく、目や鼻から感じられる刺激もとても大切なことです。
勿論、誤嚥の危険性がなくなれば経鼻経管栄養を外すことも出来ますが、経鼻経管栄養を外して口から食べられる状態に戻られる方は
決して多くありません。
とろみによって、「ただ栄養を摂る」のではなく、「楽しんで食事をする」ことが出来、
体も丈夫になり生き生きと生きていくことが出来ます。
【たかがとろみ、されどとろみ】
とろみ1つで大げさなと思われる方も多いかもしれませんが、ご自身に置き換えて考えて頂ければわかりやすいでしょう。
好きなものを食べられないということは、とても辛いことです。
とろみと一言で言ってもその方の嚥下の能力によって、ドレッシング状、ソース状、ケチャップ状と様々であるため、
主治医がいらっしゃる方はよくご相談されて下さい。
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